Canoe Building



カヌーの船体を構成するストリップ材を製作するため、シベリア産赤松 (30mm厚X120mm幅X4m長)の乾燥材を12本購入しました。 幸運にも、全て無節材で完全に乾燥した良材を地元の材木店で入手出来ました。



材木店でのストリップ材製作作業
材木店でのストリップ材製作作業

この様な大きな赤松角材から6.35mm厚x19mm幅x4m長の薄く細長いストリップ材を 切り出すためには、自宅工房では不可能なので、いろいろと適切な場所はないかと 思案していたところ、この赤松を購入した近所の材木店に作業場所の使用をお願い したところ快諾いただきました。 今回は9本の赤松角材より108本のストリップ材を切り出しました。



ルータテーブルを使用し、ルーター(Porter-Cable 690)にビード(凸半丸)とコウブ (凹半丸)のルータビットを取付けストリップ材のエッジ加工(凸半丸と凹半丸の 側面加工)をしていいます。

凹半丸加工では、ご覧の通り通常とは逆の送り(climb cut)で加工しバリの無い 綺麗な凹半丸面を得られました。この削りを安全に可能にしているのは、ご覧の通り 4枚のフェザーボードです。これにより、逆送り(climb cut)で起きる急激な 引き込みを抑えています。この手法はJohn Machne氏のwebsite (http://www.michneboat.com)で説明されているものです。



次に、舳先になるステム材を製作するために、ご覧のような蒸し器を作成しました。 先ず、縦形の細長い四角い筒の中に内径100mmのアルミ製蛇腹ホースを収納しています 。この中にステム材になる6.35mm厚x23mm幅x1100mm長のストリップ材6枚を束ね、 筒先端部の蓋の内側に吊るし、底面部の鍋より蒸気を入れ蒸し上げる仕掛けになって います。



蒸し器の左側作業台の木工バイスに取り付けているのがステムモールド (舳先部の木型)です。これに蒸しあがったストリップ材をクランプで端より 固定しながら木型の外周にはわせて曲げていきます。




蒸して曲げたステム材を今度はエポキシ接着剤で積層にします。上の写真は インナーステム3枚(赤松)とアウターステム3枚(タモ)をエポキシ接着剤で 張合わせ、ステムモールドにクランプで固定しているところです。 真ん中の写真は今回使用していますエポキシ樹脂(A)と硬化材(B)です。 下の写真は接着と整形が完了した状態です。インナーステム2本、アウターステム 2本がそれぞれ幅19mmに手鉋と自動鉋で分決めしました。



いよいよ自宅のフロントヤード?にカヌー製作のため、最も重要な船台となる ストロングバックを作成しました。

このストロングバックは、今回カヌー製作に当たって教科書として購入した CANOECRAFT(Ted Moores氏著)の指示図通り4尺X8尺 15mm厚合板2枚から縦に 200mm幅の板と300mm幅の板を切りだし、2.3m長の箱を作り、それを2本縦に繋ぎ 4.6mの箱状のストロングバックを作成した物です。このストロングバックの精度 (水平度、捻じれの無いこと)がカヌーの出来栄えを左右するので、これを載せる 架台を作るのにも一工夫しました。

ご覧の通り屋外に設置するので、まず耐水性の観点より金属製のものとなりますので、 足場パイプと足場板を使用しました。これは2年前自宅の外壁塗装に使用したもので 今回大変上手く役立ちました。足場板だけアルミ製4mものを購入しました。

このアルミ製足場板は、平行度良し、捻じれ無しと非常に品質良く出来ていました。 それで、これを幅方向に縦てその上に小型水準器を載せると4m長の水準器となり 1.8mのスパン2本分(3.6m)を一度にレベルを確認することが出来ました。



ストロングバックが組み上がった時は、もう日は沈み暗くなってしまったので、 はやる気持ちを抑えセクションモールドの仮留めのみとなりました。 写真は正面と斜め前方より見たところです。



日を改め、各セクションモールドとステムモールドを正確に取り付けました。 先ず、船首と船尾のステムモールドを正確にセンターライン上に置き、 且つ垂直に立て、6番モールドと接合しました。そして、船首と船尾間に 水糸を張り、残りの各セクションモールドのセンターを合わせました。



ストリップ材のスカーフジョイント:
4メートルの赤松から切り出したストリップ材ですので、15フィート (4.5メートル)のhull(船体)に貼り付けるには長さが足りません。 それで、4メートルのストリップ材に他の4メートル材を3等分(約1.33メートル) したものを継ぎ足し5.2メートルにします。

一番上の写真は、ストリップ材をスカーフジョイントにするために、1:7の勾配を 切断治具で付け鋸で切っているところです。

二番目の写真は、鋸で切った切断面を一枚刃の木口鉋で仕上げているところです。 ここでも、1:7の勾配を付けた木口台(治具)を使用しています。

次の写真は、6本のスカーフジョイントが出来、乾燥させているところです。 この作業は、平成16年1月2日、3日と二日間掛け48枚のスカーフジョイントし、 長いストリップ材を製作しました。

一番下の写真は、今回のスカーフジョイントを行うのに使用した、作業台です。 ご覧のように、鋸馬に3メートルの金属製足場板を4枚並べ、その上に12mmの ベニヤ板を置き、(1.8メートル縦に2枚分) 3.6メートルの出来るだけ長い 平面を作り、スカーフジョイントの直線性を確保しました。



ステムの角度出し:
いよいよ、ストリップ材を貼り付ける状況になってきまし たが、ストリップ材をステムの両側面にぴったりと貼り付けるため 、rolling bevel(連続的に変化した角度)を付ける必要が有ります。

それで、ストリップ材一枚毎の角度を確実に決めるために、 実際にストリップ材をシェアーラインから仮貼りし、その上に ストリップ材の端材にサンドペーパーを貼り付けたもので ステム材の両側面を削ります。 写真は、ステム片側面の上記作業がキールラインまで終了した時のものです。




ステム側面のrolling bevel(連続した角度変化)出しも終わり、 いよいよ、ストリップ材のプランキングの開始です。先ず、 1stプランキングです。これは#0セクションモールド(中央部)の シェアーラインの延長線上に水平に貼り付けました。 下の写真は、家の二階から1stプランキングが終えたところ を見下ろしたところで、カヌーの輪郭の出来た事が分かります。



プランキング第2日目より一日6枚貼り付をペースに進めることにしました。 1stプランキングより3枚目と5枚目にこげ茶のストライプを入れました。



プランキング第3日目も一日6枚のプランキングペースを維持出来ました。




プランキング第5日目(平成16年3月7日)ステムモールドの上部まで 両側のストリップ材を張り上げられたので、向かって左側より船底部の プランキングを開始し、1日で9枚貼り上げました。当初準備していた 108枚の全長4メートルのストリップ材はあと30枚弱となり、不足しないか 心配になってきました。



プランキング第7日目、船底部半分と船首・船尾部のSheer ラインの 加工まで出来ました。ストリップ プランキングは、あとは船底部の 残り半分のみとなりました。(平成16年3月21日)



2004年4月18日ついにプランキングの貼り収めです。これで本当に手間のかかったプランキング工程を 終えました。

次回よりアウターステムの取付とハル(HULL)の鉋がけとサンダー仕上げが 待っています。とにかく、これらの作業を一刻も早く終えないと 冬期用のエポキシ硬化材が使用出来ないかも知れません。



2004年4月25日 ようやく、アウターステムの仮止めが出来ました。 ゴールデンウイーク中にHULLのサンディングとファイバーグラッシング 迄を終えたいと考えています。



2004年7月3日 ようやく、船体外部の1回目ファイバーグラッシングが 出来ました。何と5月の連休からちょうど2ヶ月ぶりです。 土・日にいろいろと所用が有ったり、天候に恵まれなかったりで遅れており ました。しかし、この間にファイバーグラッシングについて、Canoe-craftをベースに 、John Machne氏の記事やThe Newfound Woodworks, Inc.のStripbuilding Notes 等の記事を比較検討したお陰で、ファイバーグラスの”しわ”取りや、エポキシを一人で 安定して攪拌し塗布する要領を得ました。 。



2004年7月18日 三回のエポキシコーティングの後、80番と120番の サンディングし四度目のエポキシコーティングをする事でご覧のように 光沢の有るFRPが出来ました。これで、やっと船体を引き起こし 船体内部の作業に取り掛かれます。



2004年7月31日 ご近所の方の応援を頂き、Hull(船体)をストロングバック 上のモールドより取り外しました。ステムモールドの当りでは、 はみ出したエポキシ樹脂がストロングバックとステムモールドの間に 絡み付き、ステムモールドをフリーにするのに少し手を焼きましたが、 全体的には、CanoeCraftに書かれている通り簡単に外す事が出来ました。 また、Hull(船体)のこの段階での重量はとても軽い印象がありました。 明日より、Hull内側を加工します。


2004年8月7日 Hull内側のファイバーグラッシングの為、スクレーパと サンドペーパーで内部を仕上げ、ファイバーグラスをご覧通り広げました。 ステム先端部や船底部の大きな曲り部分は、しわを付けずに伸ばすのは やり辛くストレスを感じる作業でした。

2004年8月8日 内部のファイバーグラッシングを実施しました。早朝より第一回目の グラッシングを開始しましたが、気温の上昇と共に鼻提灯の様な泡が少し発生しましたが スクレーパと刷毛で撫ぜて簡単に取り去る事が出来ました。硬化剤は#3のスロータイプ を使用していたので、ヒートアップも無く落ち着いて作業が出来ました。 サンディング後、殆ど隙間は無いと思いフィリングを4個所のみで終了したが、 見落とし個所がかなりあり、第一回目のファイバーグラッシングでボイドが出来てしあまった 様な気がします。

籐編みの座面でシートを製作しました。座面を作るのに色々と製作記事が有り迷って いましたが、コスト面とウッドストリップの船体とのマッチングから結局籐編みの座面を 付ける事に決めました。早速、インターネットで検索したところUSのサイトでずばり 取付要領が説明されており、カヌーのシートに上手く応用出来ました。 この籐編みはPress Caneと呼ばれるもので、定尺に編み上げられたものを購入し、取付前に ぬるま湯に約4時間さらし、それをシートフレームにルーターで掘った溝に、楔を使用して はめ込むものです。丁度網戸の取り替えに似ています。

ガンネルとデッキもようやく取付が終たので、10月16日、17日にシートの取付に 入りました。 シートを吊るすネジ穴は、出来るだけ垂直に 開けたいので、木っ端でドリル穴開け治具を作り、レベルで ガンネル上に同治具が水平になるよう楔をはさみ穴開け準備をしています。 インネルに切込んだスカッパーは80mm間隔としたためシート幅250mmを直接 スカッパーブロック部から吊るす事が出来ず、ご覧の様な釣り下げ具を製作 しました。まだ取り付けたばかりで面取りが出来ておりません。



10月30日、31日の土・日は雨のため室内の工房でヨークを製作しました。 デッキに使用したタモ材の残りを使用した為、幅が98mmと少し狭かったのですが適当 に曲線定規で木型を作りタモ材を切り出しヨークの体裁を付けました。曲線加工は、 反り鉋と鑿、彫刻刀、サンドペーパで行いかなり綺麗なものが出来ました。 11月3日(水)文化の日はくもりのち晴れの天気となったので出来上がったセンターヨーク を取付とガンネル・デッキのトリミング、シートハンガーの接着を行いました。 残る作業は、ステムバンド取付とニス塗りとなり、なんとか11月中に完成させたいと 思っています。





11月20日(土)最後の木工作業となったバウとスターンの各デッキに コーミングを取り付けました。このコーミングは、週末の作業時間節約の為ウィークデイの 夜に製作しておいたものです。先ず切り出しておいた厚さ3mmのタモ板目材三枚を 電熱コンロで加熱し曲げエポキシ接着剤を塗布し、前週末に製作しておいた半径300mmの木型に に取付けラミネートしたものです。船体への取付は、ガンネルに深さ5mmラベットを彫りコーミングを 差し込みエポキシで接着しております。





船体内部のニス塗り4回は11月28日迄に完了しました。船体外側ニス塗りは、12月5日に第一回目 を開始し、本日12月11日(土)は2回目のニス塗りとなりました。 写真では分かりにくのですが、ニス塗り塗装面の艶は、エポキシ塗装面程良くなく、今後のニス 塗りとその間のサンディングに少し不安が出てきました。この日は結局2回目ニス塗りだけで作業 を終えましたが、初めて本艇をヨークで担ぐ事が出来ました。ご覧の船台からの担ぎ上げ でしたが、何とかヨークを両肩に上手く載せる事が出来ました。かなりの重量感が 有りましたがヘルスメータを準備出来なかったので正確に分かりませんが30Kg以下ではないかと 思います。




12月26日(日)バウとスターンに真鍮のステムバンドとパッドアイの取付を完了しました。 以前よりこれらの金具は、木製ハルとマッチする真鍮製のものにしたいと色々と物色して おりました。ステムバンドはホームセンターで10mm幅x2mm厚x1m長のものを取り寄せ加工しました。 パッドアイはステンレス製しか市販されていないので、知人にお願いし3mm厚の真鍮板を パッドアイ状にフォーミングして頂いたものを穴明け加工しました。ステムバンドはデッキより ネジ取付を開始点とし、ステムに沿って船底部へ真鍮のステムバンドを慎重に押し付け密着するように ネジ止めを行います。気温が10度強の状態でしたのでかなり真鍮板は固く密着して曲げて行くのに 苦労しました。最後の作業は、ニス塗装の研磨仕上げが残っておりますが、正月の2日、3日に やろうと思っています。


ニス塗装面の研磨も一応完了したので、早く進水式へと行きたいところですが、 地元の中学校で指導しているサタデーワークショップ(土曜講座)の木工作品を 2月19日の中学校作品展示会に出展する為、正月明けより2月13日までの間、土・日は木工作品の 仕上げの指導と援助に手を取れました。しかし、同作品展にカヌーも出す事になり、 カートップ・フィクスチャーを作成しカヌー移動の準備も出来ました。上の写真は フィクスチャーを車の側面に降ろし、カヌーを取り付けているところです。 この木枠で出来たフィクスチャーを持ち上げルーフラックに沿って押し込むと、簡単にカヌーを 1人でカートップ出来ます。一番下の写真は、ルーフラックに取り付けたフィクスチャーの 絵です。ステンレスボルトが支点となり木製のフィクスチャーが滑ります。 次はいよいよ進水式へと進む事になります、ご期待ください。





2005年3月13日(日)大安吉日、長瀞の下流にある玉淀湖(ダム湖)で 進水式を行いました。前日の天候は少し荒れ模様で非常に気がかり でしたが、当日は晴天で微風気温は10度前後で、日向にいると暖かい くらいの陽気で進水式と試乗には最適の天候でした。


シャンペインで乾杯し、駆けつけて頂いた出席者の方々に挨拶。 その後、艇にシャンペインをふりかけ進水式としました。 当日は7名の方々に参集頂きましたが、その内カヌービルダーが3名 (リバーカヤック2艇、シーカヤック1艇、カナディアンが1艇))と ファルトボートの方が1名で計5艇で進水式に花を添えて頂きました。


この時期の玉淀湖は渇水期で桟橋まで水が無く、格好良く艇を 進水出来ないので、写真の位置から流木等を乗り越え水に浮かせました。


この艇は、”Esperanza(スペイン語で希望)”と名づけ、バウデッキに 真鍮のプレートを取り付けています。


無事進水し、カヌービルダーにしてカヌーガイドの経験のあるMt.Naka氏に 同乗頂き玉淀湖を試乗しました。ストリップ材の製材から仕上げのニス塗り完了 まで約1年半掛かった愛艇に乗りパドリングするのは最高の気分でした。 また、Mt.Naka氏のコメントによると、まずまずの安定性と速さを持っている様です。 今後、乗りこなしながら自分なりに確認して行きたいと思ています。


All Rights Reserved.
Yasushi Nakagawa