58. まとめ(完)

Acorn Dinghy まとめ


1.バックボーン材、外板材料

バックボーン(骨材)の材木には、使い慣れたタモ材を全ての部分に使用し、それなりの出来上がりとなったが、次回は、やはり耐水性の良い楢材を使いたいと考えています。How to 本等には、楢材はエポキシ接着材との接着性が指摘されていますが、次回までに検討・確認を課題とします。

今回クリンカー艇を初めて制作することで一番悩んだのがこの材木の選択でした。GL工法は、マリン合板の入手が難しいので、無垢板を使用することになったのですが、地元の馴染みの2軒の材木店に聞いたところ、1軒からノーブルファー材(モミ材)の柾目板(50㎜厚x230㎜幅x4000㎜長)が4枚を格安(15.2万円/㎥)で提供できるとの返事がありこれに決めました。結構硬い板なので、当初はガーボードのステム部の強い捻りを付けることができるのか凄く心配でしたが、古典工法の教科書の指示通り、蒸しタオルで蒸らすことで難なく、綺麗に外板貼りの全工程を無事済ませることが出来ました。教科書には、ファー(モミ)柾目材は外板として推奨されていませんが、作業性は全く問題なく、自分としてはお勧めの出来る板だと思います。但し、50㎜の厚板を自分で昇降盤を使用し4枚に挽き割りは、2m挽き割ったところで失敗し、結局、購入先の材木店にお願いしました。と云う事で、無垢板を使用する場合は、自分で大型の強力バンドソーが使用可能な場合を除き、購入先で板材にしてもらうのが効率的であることが良くわかりました




2.ビルディング・ジグ

ビルディング・ジグは、当初、教科書としていたJohn Brooks著の「How to building Glued-Lapstrake Woooden Boats《に、このジグの使用を推奨しており、またその説明に共感し、制作して大変良い結果となったと思います。但し、少し多く材木が必要ですが、これは今後船作りをされる方には推奨できるものと思います。




3.クリンカー工法

当初は、無垢材を使用してGL工法で行くことを真剣に考えていて、このためのエポキシ接着剤まで多量に購入しましたが、2008年8月に千葉県松戸市の糸川ボートを見学して、何の迷いもなくクリンカー工法に決めました。やはり無垢材は木の収縮が大きいので、外板接合部をエポキシ樹脂で固定すると、必然的にひび割れが起こり拙いことがわかりました。今回のクリンカーは約5㎝間隔に銅釘を下穴の開け打ち込み、Roveという座金でカシメ、余分の釘を切り落としその断面をハンマーで軽く叩きリベット効果を出します。これで充分接合が出来き、接着剤使用のようにはみ出した部分の拭き取りやシミが残ることがありません。




4.先付けフレーム

これは、自分の勘違いで先に取り付けたものです。もし効果的に取り付けるならば、ハレショフ・ディンギーの制作本にあるように、モールドを外板と接する角度に削りだしておき、それにフレームを取り付けるようにしないといけないのでした。今回はモールドを削らず、フレームを削ることになり、少し細いフレームが発生してしまいました。次回は、フレームは後付けにするか、ハレショフ法式でモールドの角度出しをします。




5.キールのラベッティング

この作業は、クリンカー工法としたため、ガーボードとキールの接合部は、キールにガーボードのエッジを入れ込むためにステムからスターンまでのキール全長に亘りノミでラベットを掘る必要がありました。タモ材のキールは、大変硬く手ノミで掘るのは本当に大変でした。次回は、もう少し効率的なラベット堀を考案出来ないが課題です。




6.トランサム

この木材には、やはりタモ材を使用しましたが、綺麗な板目で2枚接ぎする事が出来ました。しかし、後の作業工程が気掛かりで、何時もの木工作業で行う鉋削りをかなり省略したため、サンダー使用の比重が上がり仕上げ面が今一つとなりました。今後は、手を抜かず、鉋で仕上げるようにします。「急がば回れ《を痛感です。




7.スパイリング

この工程は、私の教科書「HOW to Build Glued-Lapstrake Wooden Boat 《John Brooks著の本通り2関節法式のスパイリング・パターンを作成しコンパスを使用した事で大正解でした。スパイリングは、色々な方法が紹介されていますが、今回の方法は、かなりポピュラーな方法であると思います。また、今回、曲面の線をトレーする方法をこれにて完全にマスターできました。今後の応用が楽しみです。




8.外板切り出し

今回採用したスパイリング方法で写し取った各モールドのポイント間を15mm厚x20㎜幅x4m長のバテンデで結び外板の曲線を描きますが、このバテンを外板材に釘付けするので、電動丸鋸の習いフェンスとして使用でき、鉛筆等でバテンの曲線をトレースする必要がないのです。いとも簡単にこの曲線を切り出せます。仕上げは、このバテンにベアリング付き習いビットでバテンと外板を面一に出来、鉋をかけたようにこの曲線が滑らかになります。本当によい方法であると感心しています。




9.バックボーンと外板の(接着)固定

バックボーン(キール、フレーム、トランサム、ステム等の骨格)と外板との固定は、古典工法の教科書「Traditional Boatbuilding Made Easy Richard Kokin著《の指示通り、ポリウレタンコーク(3Mの4200)を使いました。これは、弾力がありますが速乾性のため、はみ出し部は早く拭き取らないと固まり汚くなります。反省点は、周囲温度にも依りますが、塗布後15分以内の拭き取りを励行することでした。




10.ラップ面の角度出し

この作業も、John Brooksの本の指示通り、先ずモールド上の外板ラップ面を豆鉋で角度出しをし、次にモール間のラップ面の角度出しは、先に角度出しした角度のラップ面を繋ぐように鉋掛けすることで、本当に綺麗に隙間内ラップ面を作ることが出来ました。この作業のポイントは、如何に、豆鉋でローリング平面を削れるかと言うことと思います。当然、鉋を適切に遂げる技量も必要であります。




11.リベット留め

この作業工程のページにも書きましたが、銅釘を受け止めるRove Setの穴は、当該銅釘の径の2倊位が無いと、Rove Set自体で銅釘をカシメてしまい、それ以上釘を打ち込めません。したがって、この工程のポイントはRove Setの適切な穴径が重要です。




12.ガンネル取り付け

ガンネンルは、インネルとアウトウエルの2種類を取り付けましたが、ステムの際のアウトウエルの切り込みが結構手数が掛かりましたが、反り上に難儀したのは、その角度に取り付ける時のクランプの取り付け方法でした。事前に方法をよく考えておくべきと痛感しました。




13.ダガーケース

この部分の構造上のポイントは、ダガーボードが水中の障害物と衝突した際の強靭性と、キールとの水密性が重要なので、教科書に載っていたあらゆる対策を取り入れました。強靭性では、キールと同ケースを接合する部分に大きめなベッドログ(固定部材)とケース根元の前後に補強ブックを取り付けています。水密性対策では、先ずケース内面をエポキシ塗装を確りやり、ダガーケースとキールの接合ではポリウレタンコーク(3M4200)とステンネジで強力に固定したが、長期の経過を見たいと思います。




14.フロアーボード

この部材には、外板(8㎜厚ノーブルファー)の端材をかき集め、2枚接ぎ合せで100㎜幅を確保し、それを更に7㎜厚位まで鉋削りをしています。接着は耐水性タイトボンドⅢを使用しましたが確りしており正解でした。7mm厚のこの板は、85kgの自分がフレーム間の上に乗っても全く強度的に問題なく、効率的な部材使用に満足しています。




15.ラダー

この部材には、以前より使いたかったチーク材を入手し19㎜厚に製材しましたが、ワックス状の脂分が表面、断面にあり、接ぎあわせるときは、脂分をシンナー等で拭き取り十分して接着する必要が良くわかりました。構造的には、大体図面通りの形状にしましたが、跳ね上げ機構はボックス方式ではなく、当該ページに載せているようにラダーブレードに取り付けた扇形真鍮板をラダーヘッドの支点で回転させるものです。この真鍮板がブレードの浮力対策(錘)にもなるし、またチーク材の茶褐色と上手くマッチしとてもトラディショナルな感じで大変気に入っているので、自分のカヌーセイリングにもその内取り付けたいと考えています。




16.ダガーボード

外板と同じ木材(ノーブルファー柾目材)を22㎜厚にきり出し二枚接ぎ合せで使用しました。柾目材で狂いは少ないのですが、逆目があり二枚接ぎ合せでは、合わせ方向に注意しないと一度に鉋掛けできない欠点があります。対策は、鉋下端の刃口を0.5㎜位にして、裏金をギリギリまでつめることですが、今回は刃口埋めをしている暇がなく逆目を避けるため準目で半分ずつ削りました。




17.スパー(マスト、ヤード、ブーム)

今回で2度目のバーズマウス方式(8枚の各ストリップ材片側の木端面を90度に切り込み、8角形に噛み合わせ方式)で全てのスパーを製作しましたが、ストリップの製作精度(木端面の90度切り込み)が今一つであったのが上満でした。原因はルータテーブルの設定であると思われるので、次回はこの点を慎重に確認してルータ削りをします。この点の精度が落ちると、接着面はほぼ確保されているので問題ないが、8角形の何処かで隙間が発生しエポキシ重点箇所が見えるので質感が落ちます。




18.セール

USのセールライト社セールキットを採用し正解でした。当該ページにも書きましたが、実に上手く裁断されており、見栄えもトラディショナル感があり満足いくものです。付属パーツは日本では見たことのないハトメ(ツメ付き)と同カシメ工具まで準備されています。




19.ブロック

今回のブロック自作で、木工旋盤まで習得でき技術的に大変収穫があり満足しています。ハーケンブルックのように樹脂ローラベアリングなんかは使用できませんが、中船のブロック相当の性能は出ていると確信します。ところで、木製ブロックカバーの軸押え板としてUS10セント硬貨を打ち付けていますが、「それは違法ではないか《との指摘お受け必死にUS政府関係のHPを見たら、同造幣局が出している5セントと10セントに関する改造に対する除外規定を見つけ、今回の使用は装飾に当たるので、違法性がないことを確認出来ホッとしました。




20.ステムバンド、キールガード

カヌーを作った時から、ステムバンドは真鍮板を取り付け、その効果と装飾性に満足しており、今回は3㎜厚の真鍮バンドを使用していています。 真鍮は、耐海水性の良いネーバル真鍮を使用すべきですが、2㎜厚程度の物が市場に無いので、仕方なく通常の真鍮(6-4黄銅)バンドを使用しています。真鍮平棒材は快削黄銅であるため、鉛を含有しており同時にその残渣として錫があるので、ネーバル真鍮に近い特性があるような感じがします。




21.塗装

今回は無垢板を塗装すると云う事で、木の伸縮に対応できる塗料及びヴァーニッシュを探しました。その結果、ペイントはMARIARTの下塗剤P100と上塗剤F100を選び、艇の外側をシェアーストレークの下までを白ペイント塗装しました。ペイントの刷毛塗りは初めてで、かなり難しく今後まだ何度か試行錯誤しないとその技術は習得できないと実感しました。 艇の内側全体と、外側のシェアーストレーク一枚はヴァーニッシュ塗りとするため、インターナショナルのオイル系ヴァーニッシュのスクーナーを使用しました。これは、指示とおりやると其れなりに綺麗になるので大変使い易いヴァーニッシュだと実感しました。但し初回の希釈は説明書通りの10%でなく、20%位まで希釈しても良いようです。




以上で、このAcorn Dinghy制作のページは完了しました。長い間ご覧頂き 有り難う御座いました。今後の舟作りの予定は、まだありませんが、 今後もクリンカー艇を作り続けたいと思います。







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Yasushi Nakagawa