8. スパイリング工程

2枚目のプランク材を切り出すため、スパイリングパターンとコンパスを使用し外板の外形を写し取ります。驚いたことに、この5mm厚のベニア板はステム周辺のきついカーブ部分で少し軋み音が聞こえます。しかし、今回ラップストレーク材(プランク材)に使用している8mm厚のノーブルファー(樅材)は、驚くほど素直にきついカーブをトレースしてくれます。


2枚目のプランク材を丸鋸冶具とスパイリングした曲線定規(バテン)で切り出します。


2枚目のプランク材をガーボードにラップさせて仮と留めしたところです。上手くステムのゲイン部も隙間なく重なっています。

今度は、2枚目のプランク材をガーボードにラップさせて銅釘で留める本番です。写真の冶具は、外板の外から銅釘をラップ部を貫通し、外板内側の狭いフレーム(12.5m幅)の真ん中に貫通させるための下穴を開けるものです。

正確に開けた下穴に#14の銅釘を打ち込んでいるところです。このサイズの銅釘は約2.1mm角のものです。釘の間隔は1フレーム間隔(380mm)を6等分していますので約63mmとなります。これを正確に墨付けするためには、定規を使用すると簡単に出来ます。といっても定規で63mmを直接測るのではなく、380mmの間隔の 2点間を直線で結び、各交点を通りこの直線と直角に交わる平行線を引きます。この平行線間を定規で6等分する点をマークし、スクゥエア使用してこのマークと二点間を結ぶ線との交点が出来ます。これが6等分の交点になります。この場合ですと、70mm、140mm、210mm、280mm、350mm、420mmの点です。

ご覧のように、ガーボードと二枚目外板を#14銅釘(2.11mm角)でリベット締めします。しかし、問題が二三出てきました。というのは、ROVE(円錐形の座金)の釘が通過するセンター穴のバラツキが激しく中には穴が大きすぎで利かないものや、細く過ぎて無理すると釘が折れ曲がるものが多々出てきました。対策はROVEのセンター穴の下穴処理と、ROVEセット(押し込み棒)の適正角度での叩き込みのようです。
三枚目のラップストレーク材を切り出し、二枚目のラップ面の角度をラップ角度冶具でマークし豆鉋で削ります。ここは慎重に削りすぎないよう、また均一な平面を削りだせるように注意します。片面のラップ角度だしが出来たので三枚目を仮留めしたところです。

三枚目のラップストレーク材が取り付いた状態です。ここでは、二枚目と三枚目のラップストレークの銅リベット打ちは未だしていませんのでラップの隙間が広がらない打ちに応援の手を借りて、リベットを締め付ける必要があります。
2枚目、3枚目のラップストレークもリベット留めが終え、4枚目のラップストレークを切り出し仮留めしました。ここまで来ると、外板張り工程の半分まで来たことになり一先ず、ほっとしています。当初心配していた外板の外板の形取り(スパイリング)は、思いのほか高精度で再現性が高く、効率も良いので大変満足しています。今回、外板スターン部のキツイカーブを押さえ込むため、新たに積層湾曲材でクランプを作成しました。かなり強力な締め付け力が得られます。


4枚目までのラップストレークもリベット留めが終えましたが、各モールドには12.5mm幅x15mm厚のフルフレームが駒留で各モールドに取り付けられています。このフルフレームは、以前よりモールドに取り付いている写真が示すとおりタモ材5mm厚のストリップが3層で作っております。当初、外板外から銅釘の下穴を明け、銅リベット留めをする予定でした。しかし。3層フレームは弾力性がものすごく高く、角型銅釘の下穴を明けて玄翁で叩き込んでも銅釘は貫通できません。そこで、#6(3.5mm径x31mm長)のシリコンブロンズネジを急遽輸入し、取り付けることにしました。

フルフレームのネジ留め作戦も上手く出来、これより次の5枚目プランク材をスパイリング(外形形取り定規の使用で)し、切り出しました。写真からは少し分かり辛いですが、緩いS字をしておりました。5枚目のスパイリングまで来ると、コンパスとスパイリング・パターンを使用した形取り精度は正に、「ドンピシャ」と言ってよいくらいの状態になりました。

トランサムから各プランクの貼り付け状態を見て頂くと、トランサムと各プランクとの間に2mm程度の白い物が見えますが、決してトランサムの削りを失敗したわけであはありません。これは、今回採用したこーキング材によるベディングでは、Expansion seamと呼ばれる木材の膨張分の逃げ代のようなものです。こんため、各プランクをベディングするたびに、 2mm高x11mm奥(トランサムの厚みの半分)までテーパーを鑿で削ります。トランサムと、プランク材の面出しは豆鉋で斜めにさくさくと削れ、本当に綺麗な正目の木口が現れ、とても気持ちの良い作業です。

今日は暑い一日でしたが、5枚目プランク材を何とかネジ留めまでよろうと頑張りましたが、フルフレームのネジ止め作業や5枚目ラップの為の 4枚目ラップランドの鉋削りで終わってしまいました。それでも、カム・クランプで5枚目をプランクを仮留めし、全体を眺めると随分外板張り作業が進んだと、なんだか嬉しくなってきました。


7月13日、今日は5枚目プランクの貼り付けと、応援者を一人たのみ、4枚目、5枚目のリベット打ちを完了させました。リベット打ちは、応援者にプランクの外側から打ち込んである銅釘をバッキングハンマー(鉄アレーに打ち込みピンを取り付けた冶具)で強く押さえてもらい、自分がハルの内側に潜り込みrove という円錐状の座金を打ち込み、喰い切りで銅釘を座金一杯できります。そして100gのハンマーで軽く十数回叩き、銅釘を丸くしてリベット留めとします。これが大変骨が折れる作業で、室温が30度を超える夏の暑い日ではかなり疲れますが、今日は128個のリベット打ちとなりました
遅くなりましたが、Lapstrake plankingのラップ面角度削りについて、その工程を紹介します。私はJohn Brooks著のHow to Build Glued-Lapstrake Boat 本の方法を採用しています。先ずラップ冶具(19mm幅のラップ面を作る)で一つ前のプランクにその幅を鉛筆で斜線をマークします。そしてモールド毎のラップ角度に従って豆鉋で平面を削りだすと、写真のように細長い半円形に削れます。今度は1番モールドからトランサムまでをつなげるように、豆鉋で削りると、ご覧のように綺麗なラップ面が仕上がります。


6枚目のLapstrakeの準備が出来たので、スパリングパターンとコンパスを利用し6枚目のプランク材を切り出しました。6枚目まで来るとSheerに近いので湾曲が激しく、ご覧のようにかなり後部で曲がってきました。次回以降の7枚目とSheer 部のプランク材は、現在の材木(240mm幅x4m長)では取れないかも知れません。もし、そうなったとしても湾曲点近くでスカーフジョイントする用法があるので、その時は、その作戦でやろうと思います。


このところ暫く外出が続き、製作は停滞しておりましたが、ようやく第六枚目のLapstrakeが完了しました。慌てると、間違の基となり注意が必要とは分かっていますが、フレームとプランク材を止める#6シリコンブロンズのネジ首部の下穴を#8と間違え数箇所4mm径で開けてしまい、木栓で一旦塞ぎ再度した穴を3.5mm径に明け直しました。後二枚のストレークを張り上げれば、船体の全形が分かってきます。

#7ストレークプランクをスパイリングして、現在手持ちのプランク材に載せてみたところ、前回心配した通りトランサム側で大きく跳ね上がっており、スカーフジョイントで”くの字”に接合しないと#7ストレークプランクがトレースできません。そこで、ご覧の通り1:8の勾配でスカーフジョイントすることにしました。寸6分、寸8分の平がんなで丁寧に勾配を削ります。今回この大きな平鉋をAcorn製作に使用したのは初めてです。最近使用していなかったのですが、鉋下端を調整する必要も無く、気持ちよいくサクサクと1:8の勾配を削ることが出来ました。接合部分は、System ThreeのGell Magicと言うパウダー不要のエポキシ接着剤です。これを圧搾しているのが、今回ラップクランプとして自作したかむクランプですが、実に上手く利用できました。



#7ストレークプランクのスカーフジョイント後のくの字になったプランク材です。綺麗に接着できており、全く問題ない接合が得られています。このプランク材から切れだした#7ストレークはご覧のように大きく円弧となっていて、底部と頂点の距離は240mmであり、手持ちの板1枚(220mm幅)からでは取れませんでした。#7ストレークを仮留めしたところの写真ですがかなり垂直に立ってきました。


#7ストレークプランクを左右とも取り付けました。このプランクのトランサム部分のラップランドは、初めて掘り込み(Gain)をつける形で削ることになりました。#8ストレークのスパイリングも終わり、写真の右側端で作業台に載っているのが、同ストレークのスカーフジョイントをしているところです。1週間後にスパリング・パターンで形取りし切り出します。最後の写真は#7ストレークプランクのスカーフジョイントをした箇所です。接着厚みがある分、接着層の幅が見えます。
何とか8月中にプランキング工程を終えようと、本日#8ストレークプランクを切り出しましたが、#7プランクのリベット打ち工程に手間取り#8を打ち付けることは出来ませんでした。それでも片側だけですが、#8をフレームねじ留めをして、最終プランクの仮の張り上がりを確認しました。#8はシェアーですのでかなり湾曲していて幅広い感じに見えます。

2008年9月7日ストレークプランクの張り工程が完了しました。4月末に作業を開始し、パートタイムですが4ヶ月掛かったことになります。この工程では銅リベット作業に随分手を焼きました。と言うのは、リベットを留めるRoveと言う座金を銅釘に押し込む冶具の穴径が細く、打ち込むとRoveが釘に食い込み曲がってします問題でした。しかし、最後の一枚を打ちつける前に、アメリカの釘の販売元に問い合わせたところ、この問題と正しい方法が分かり全てが解決しました。


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Yasushi Nakagawa